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おそらのうえで。

おそらのうえで。

*卒業*



  天気は快晴、問題無し。

   鏡の前で
 
 いつもより念入りにチェック。

    身だしなみもばっちり。

  いつもより軽いカバン片手に

      家を出た。

 今日は卒業式。



 *卒業*


 「卒業おめでとうございます」


 教室の前で一年生の女のコが

 そういって胸にコサージュをつけてくれた。

 まっしろなかわいいコサージュ。


 「一緒に写真撮ろうよ」


 教室の中は

 何かの撮影会みたいに

 フラッシュがいっぱいで眩しかった。

 何人かは教室のすみっこで

 お世話になった担任や副担への色紙に

 最後のメッセージを書いてて。。。


 そんなの見ても

 自分が今日で卒業なんだって実感

 わいてこなくって

 胸につけられたコサージュが

 なんだかくすぐったい。



 「変な感じだよね。
    今日が最後なんてさ。。。」


 写真を撮りながら

 友達とそんなコトバを交わす。


 「そんなことより・・・どうすんの?」


 「なにが?」


 「こ・く・は・く。するんでしょ?
  王子さまに。
    最後なんだからさ」


 “王子さま”

 告白・・・1回してるんだけどな。

 一年前のバレンタインデーに。

 しかも・・・振られてるし。

 隣のクラスの王子さま。

 
 「・・・わっかんない」

 わたしは一言そう答えた。

 
 ちょっとやる気の無い私の肩を

 ぽんっと叩いて彼女は言った。


 「最後なんだから。
   ちゃんと伝えなきゃもったいないよ」


 彼女はいつもそうやって

 悩む私の背中を

 ぽんっと押してくれる。

 そんな彼女の存在は

 ひっこみじあんな私にとって
 
 とってもありがたい存在なんだ。


 でもね

 正直言って怖いんだ。

 一度振られてるんだから。

 “しつこい”って

 そう思われるのがコワイの。


 王子さまは

 すっごい面倒くさがりヤで

 女の子の相手なんて

 面倒だからイヤってタイプ。
 
 だからなおさら

 怖くって・・・言えないんだ。



 「なんであんなの
  スキになっちゃったんだろうね、私」


 笑ってそう言うと

 彼女も笑ってた。


 「そんなのあたしにもわかんないよ」



 実際・・・私自身わかってない。

 なんで彼を好きになったのか

 これっぽっちもわかんない。

 理解も出来ない。


 でもね

 なんでかなぁ・・・

 すっごくスキなんだ。

 悔しいほど大好きなんだ。

 気が付けば恋してた。

 気が付けば目で追ってた。

 恋ってそんなもんでしょ?

 気が付けば・・・

 好きになってた。



 「卒業式、泣くかなぁ?」


 「中学のときは泣かなかったなぁ~」


 中学の卒業式

 とくに名残惜しくもなかったのか

 “もらい泣き”さえもしなかった。

 哀しさよりも先に

 高校生活への楽しみがあったから

 哀しくなんかなかったんだ。


 「あ、うわさをすれば王子さま登場」


 廊下で私たちの話を聞いてた友達が

 そう言って私を呼んだ。
 


 私は急いで廊下に飛び出て

 彼に挨拶したんだ。


 「おはよ」


 面倒くさがりで女のコと関わるのも

 そんなにスキじゃない彼だから

 この一年間

 毎日こうやって挨拶をしても

 ちょっとこっちを向いてくれるだけで

 返事はない。

 
 もしかしたら・・・

 もしかしたらいつか

 挨拶を返してくれるかもしれないって

 ちょっと期待してたんだけど

 結局、最後まで

 返してくれなかった。。。

 



 卒業式は順調に進んだ。

 答辞を聞いても

 送辞を聞いても

 校歌を歌っても

 涙はこれっぽっちも出なかった。

 卒業証書の授与で名前を呼ばれても

 校長先生の話を聞いても

 ちょっとうるうるってくることはあっても

 流れることはなかったんだ。



 でもね

 この体育館を次々と出ていく列

 私の目の前を通りすぎる王子を見て

 大粒の涙がこぼれおちたんだ。

 

 「私・・・行ってくるね」

 体育館を出て

 私は友達にそう言い残して

 彼の後ろ姿を追いかけた。


 
 「ちょっと待って!!」


 人込みの中

 私は王子さまのブレザーの裾を掴んで

 引き止めた。

 「私っ・・君のこと
   ほんと・・・すっごくスキでした」


 彼の後ろ姿に

 これまでの想いをぶつける。

 返事なんて期待してない。

 どうせ実らない恋だから。

 結局

 彼はこの一年間

 私を見てくれることはなかったんだもん。

 だから

 返事なんていらない。

 私がこれから後悔しないために

 前に進む為に

 言いたかっただけだから。



 「・・・それだけ。
   ごめんね、引き止めて」

 そういって

 彼のブレザーの裾から手をひいた。

 “さよなら”は

 言わないって決めてた。

 “さよなら”だけは

 言いたくなかったんだ。

 お別れのコトは

 ・・・言えなかった。



 「ちょっと!」


 走り去ろうとする私を

 彼は初めて

 引き止めた。



 涙目になってる私をみて

 ふって笑って。

 自分の胸のコサージュを取って

 私の髪にぞっとさした。


 でね

 言ってくれたんだ。


 「  卒業おめでと。

   ありがとう。

      ごめんね」


 拭いきれないほどの涙が流れて

 私はうつむいた。

 そして

 気がついたらもう

 そこに彼の姿はなかったんだ。




  3年間

    ずっとスキだったあの人から

 卒業するって決めたんだ。

      でね

   次に会った時には

       ちゃんと笑えるように

    “前”に進むんだって

      そう・・・決めたの。








この作品はたくさんの方に読んでいただいて
たくさんの感想をいただけで
ほんでもって、小説を書き続ける駆け出しの時の作品。


卒業の季節に描いたんですけどね。
私自身、すっごいスキな人がいて
ちょうど卒業を控えてて
キモチを伝えるかどうか悩んでました。


結局この小説みたいに
キモチを伝えることは出来んかったけど
今になったらいい思い出。

この小説は私の理想そのものでした(笑)



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bbs

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